表面処理の種類
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硬質クロムメッキ


多くの機械的特性をもつ代表的な工業用めっきである。クロムめっきとしては装飾用も硬質も本質的な違いはなく、使用目的が装飾以外のもので、比較的厚いめっき(JISでは5μm以上と規定)を工業用(硬質)クロムめっきと呼んでいる。とくに潤滑子由などの保油性を要求される場合は、表面が多孔質なポーラスクロムめっきが活用される。
素地に直接、密着性の良好な分厚いめっきを均一に施すというのが、工業用(硬質)クロムめっきに要求される基本的な条件である。そのため、めっき操作は他のめっきとかなり趣きを異にし、めっき前後の工数を多く煩わすものとなる。
皮膜特性
(1)高硬度
通常の電気めっきの中では最も高硬度で、熱処理鋼、窒化鋼などよりは遥かに硬度が高い。
(2)耐摩耗性
クロムめっきに要求される最も重要な基本的性質であり、極めて良好である。
(3)耐熱性
加熱によって、皮膜中に吸蔵されている水素の放出が起こり、硬度が低下する。300℃以上に達すると、硬度は急激に低下し、耐摩耗性も低下する。従ってクロムめっきの水素の除去には、180~200℃で1~4時間ベーキング処理することが大切である。
利用分野の一例と利用日的
分野 | 適用部品 | 利用目的 |
---|---|---|
自動車 | クランクシャフト、同シャフトジャーナル、 カム、シリンダーライナー、 カムシャフトジャーナル、 各種シャフト、ピストンリング、 ピストンロッド、軸受 | 耐摩耗性 潤滑性 多孔性 硬度 |
航空機 船 舶 | クランクシャフト、クランクシャフトジャーナル、 シリンダー、バルブ、ピストンリング、 ピストンロツド、ピン、スライドチューブ、 補助軸 | 耐摩耗性 肉感り再生 多孔性 潤骨性 |
産業機械 | 織物・化学・食品・製薬・印刷などの乾燥用シリンダー、 各種シリンダー、各種ロール、スクリーンプレート、 スピンドル、マンドレール、スリープ、ピストンロッド、 水圧ドラム、バルブ、コンプレッサークランク | 耐摩耗性 耐食性 多孔性 硬度 潤滑性 非粘着性 汚染防止 |
検査工具 切削工具 | ヤスリ、フライス、ブランクゲージ、マイクロメ一夕、 リングゲージ、各種ゲージ、リーマー、ツイストドリル、 タップ、各種ドリル | 非粘着性 硬度 耐摩耗性 肉盛り再生 切削性 |
金型 | ガラス用金型、プラスチック用金型、各種金型 | 非粘着性 耐摩耗性 肉盛り再生 |
化学工業 | 各種塔槽、ポンプシャフト、インベラ、バルブ | 耐食性 耐摩耗性 |
発注の際の留意点
1.素材に関する留意点
(1)めっきの容易な素材
炭素鋼(低炭素鋼は最良)、クロム鋼、ニッケル鋼、ニッケル・クロム鋼、普通鋳鉄、ニッケル、銅・銅合金、亜鉛合金。
(2)特殊な前処理を必要とする素材
ステンレス鋼、タングステン鋼、肌焼鋼、窒化鋼、アルミニウム合金。
(3)めっき不適当な素材
タングステンやマンガンを多量に含有する鋼類。

(4)素材の硬さについて
クロムめっきによって水素脆性が生じることは知られているが、一般に硬い素材ほどその影響は大となる。従って、素材を単純に硬くすることは避けるべきである。クロムめっきを施す場合は、通常用いられている最適硬さより、ロックウェル硬度(HRc)で3~4低くし、60くらいを限度とする。 めっき後のベーキング処理は素材の硬度がHRc40以上の場合に行なわれることが望ましい。
2.製品設計上の留意点
(1)めっき治具取り付け部
工業用(硬質)クロムめっきではめっきを行なう面積に対して、治具の容量が大きく、しかも被めっき物にきっちりと庄着する必要があるため、被めっき物にはネジ切りされた軸部、穴部を有することが望ましい。
(2)角部及び隅部
クロムめっきは均一電着性に劣るため、鋭い角部にはめっきが厚く付き、隅部には付きにくいものである。角部にRを付けられるものはできれば逃げのあることが望ましい。
(3)寸法精度
(イ)寸法精度をとくに必要としない場合、ある程度寸法にゆとりをもって設計し、めっき後そのまま使用する。
(ロ)めっき後、研磨仕上げが困難なものについては、めっきしろを考慮に入れて設計する。
(ハ)特に精度を必要とするものについては、研磨しろを考慮に入れて設計し、めっき後に研磨する。
(ニ)寸法精度も必要だが、コストを下げたいという場合、研磨しろを見込まず、許容誤差範囲内にめっきする。
(4)熱処理
熱処理された鋼は肉眼では見えない割れ目を有する場合があり、母材によってはめっき後にクラックを生じて使用に供さなくなる。熱処理は均質に施し、素地組織に変更のないものが望ましい。
(5)素材の仕上げや粗度
(イ)クロムめっき液は強酸の上、酸化力が極めて大きいから、めっき有効面以外の部分の最終仕上げはめっき後に行なう方が
望ましい。特に亜鉛合金、銅・銅合金、鋳物などではその配慮が必要である。
(ロ)クロムめっきには素地の租さを平滑にする作用がないため、一般にめっき後、得たい平面租さは事前に素材に付与して
おきたい。
(06版電気めっきガイド:全国鍍金工業組合連合会より)
メッキ名称 | 硬質クロムメッキ |
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他の呼び名 | ハードクロム、ハードクローム、硬質クローム、工業用クロム、工業用クローム、ICr、HCr、硬質Cr、工業用Cr JIS H 8615 |
対応規格 | MIL-STD-1501 C |
特 性 | |||||
装飾 | 熱的特性 | 耐熱性 | ○ | ||
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防錆・防食 | 熱吸収性 | ||||
耐摩擦特性 | ◎ | 熱伝導性 | |||
機械的特性 | 硬度 | ◎ | 熱反射性 | ○ | |
潤滑性 | ○ | 物理的特性 | ハンダ付け性 | ||
寸法精度 | ボンディング性 | ||||
肉盛り性 | ◎ | 多孔性 | |||
型離れ性 | ◎ | 非粘着性 | |||
低摩擦係数 | ○ | 接着性 | |||
二次加工性 | ○ | 密着性 | ◎ | ||
馴染 | 化学的特性 | 耐薬品性 | △ | ||
電気的特性 | 電導性 | 汚染防止 | ○ | ||
高周波特性 | 抗菌性 | ||||
磁性 | 耐刷性 | ||||
低接触抵抗 | その他 | 海水腐食防止 | |||
抵抗特性 | 写実・再現性 | ||||
光学的特性 | 反射防止性 | ||||
光選択吸収性 | |||||
光反射性 | ○ | ||||
耐候性 |
基 材 | |
アルミ | ○ |
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マグネシウム合金 | ○ |
SS | ○ |
SUS | ○ |
チタン | |
銅 | ○ |